2008年11月22日土曜日

すごい本

 今年の春に、先輩に勧められて読んだ本についての話題を一つ。冨山和彦のベストセラー「会社は頭から腐る」である。著者の紹介や、本の詳細内容については割愛する。自分は本を読むとき、どの本を読むべきか非常に迷う。事前情報を仕入れない方なので、ここは時間を有意義に過ごすか無駄に過ごすかの決断を迫られる。忙しい今ではここは重要な分かれ道だ。この本は有意義の最たるものであった。再生機構で壮絶な現場の陣頭指揮に立ち、組織・人間と向き合った経験と著者自身のするどい感性が融合、惰性の言葉は一言もなく、しいて自分が感じた勝手な解釈をさせてもらえば、明鏡止水の心境で全身全霊渾身の思索の結果、ZONEに至ったときにしか紡ぎ出ない、珠玉の名言が3ページに2文節くらいの割合で登場する。たとえば修羅場で真っ先に逃げ出す昨日までのエリートや、逃げたいが裏切れないと優柔不断で苦悶するエリート、修羅場で意外な粘り強さを発揮する昨日までのダメ社員など、自分の会社や再生案件の豊富な事例で描かれ分析されている。その結果著者は「人間はインセンティブと性格の奴隷である。」という。修羅場に直面した人間を分析する目は暖かく優しい。「したがって社長の仕事はそこに人間がいる限り永遠に答えのない世界を操縦し続けるようなものという」、「自分はこれについて考え違うけど上司の考えに添うのが優秀な社員、または自分はちょっと考え違うけど作者はこう思っているのだろうという、そういう解を見つけ出す能力に長けた人材ばかり輩出する教育の連鎖では真のリーダーが生まれようがない」、「今、立派なビルで働いている負け戦をしらないエリートたちは、過去に泥縄のガチンコ勝負や負けを経験し、日本を作り上げた諸先輩方の貯金を食いつぶしながら持ちながらえている状態」、「日本は少しづつ浸水している大型船である。(ここの表現を長い年月をかけて侵食する風呂場のカビにもたとえている)船内ではパーティが継続されている。浸水を知らない人もいるし、浸水を見て見ぬふりする人もいる。パーティを続けたいからだ。しかし、大型船が浸水を自覚するくらいの傾きが出始めた時、迫りくる氷山をかわしながら指揮を取り、舵を取るリーダーが不在である。そういう経験や訓練がないリーダーで溢れ返っているからだ。やがて転覆、沈没である。真のリーダーの育成が急務である」、「大企業では負け戦を知らないサラリーマンが出世して、社長になっておめでとうだなんて。社長になることはおめでたいことではないのである」、「大手製造業のエリート社員の「現場を知っている」というのは工場見学レベル」、「真のエリート候補こそ生死を掛けたガチンコ勝負や負け戦を経験させろ」、「大企業ではいくら困っても命は取られない、出世競争が厳しい、ライバル会社に出し抜かれる等は大した問題ではない失笑もの、それに比べ中小企業の失敗は死を意味する、すなわち大企業では仕事ごっこ、競争ごっこをしているに等しい」、などまだまだたくさんの経験から得た生々しい言葉が続く。自らを勝ち組出身と名乗り(東大法、司法試験合格)、その特性と世にいうエリートたちを客観的に分析、結果、負け戦を避けてきた人たちだという。真のリーダーたるべき彼らにその資格は無いと結論付け、その対処について、世界を見つめ、人を見つめ辛辣かつ温かく実直な提言をしている。ビジネス書としてだけでなく、人間学としても役立つ素晴らしい名著である。なお、手元に本が無く、思い出して書いたので実際にはこのとおりの文章ではありません。だいたいこういうような記述だったという感じです。あしからず。

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